かれいどすこーぷ

何年ぶりか
満月が巡るのを静かに眺めて
夏の夜に金が映えて妙に落ち着く
理科の先生をやっててよかった
それでなければきっと
自転や公転や満ち欠けをこんなにも堪能できない
とうの昔に忘れてしまっていただろうに
理科って教科は忘れがちな何かをその都度揺り動かしてくれるから
やめられない
幾度、感動したかわからない
どんなこともいつか一回りして
この星に、この世界に生きることを
ここに息づいていることを知らしめてくれる
小学生にも中学生にも高校生にも
絶えることなく教えてきたからこそ見える真実もあって
時折真剣に教師をやってみようかと考える
できれば教える幅が広い方がいい
色んな感性に逢えるから
理科の先生だったらきっと、何年、年を重ねても飽くことはない
科学も生徒も進化するから
ずっと感化されながらここまできた
「学びを楽しむ」才能はどうやって育まれるのか不思議でならない
これまで‘本物’の理科教師に会ったのは二人
一人は母校の生物部の先生
一人は教育実習先の先生
もう一人、予備校の生物のエキスパートも間違いなかったが、少し教師とは外れる
久しぶりに見た、紛うことなき「教師」だった
今思うと母校を去った先生も教師だったのかもしれない



生物に必要なのは、知識ではない
与えられた表層の事実から本質を捉らえる力
そこに絡む生命の精巧さを読み取る能力
何故かを問い続ける探求心と考える力


きっと母校を去ったあの教師はそれを知っていて、あえて与えることをしなかった
穴のあきすぎたプリントをただ配って眺めていた
そんな授業ばかりしていた
教育実習先の授業はある意味この授業とそっくりだった
「自主的に」学ばせる
生徒自身が考える授業だ
逆に言うと
やりたい人だけやる授業だ
やる気のない人は放置するだけのリスクの高い授業
ある意味誰より厳しかった
この次のテストでレッスンupしてしまったことをしばらく後悔した