生活感

ともに時間を過ごしたひとに
とても生活感のあるひとがいて
家具はほんのわずか
本当に必要なものを
必要なだけ携えて
ともすると淋しくなりそうな
そんな簡素な部屋で
毎日圧力鍋でお米を炊き
自ら魚をさばき
ものの30分ですべての調理を終えていた
私の知る限り
一度も出来合いの惣菜に手を出していない


テレビもネットも新聞すらない部屋で
それでも毎日が充実していたし
会話が途切れることはなかった


たとえば私たちのなかに
恋愛感情がなかったとして
あの信頼感が欠けることはなくて
ひとりの人間として
互いを思いやれたことは
何にも代えがたい



かつてすきだったひとが
つぎつぎと結婚を決めていくのは
なんだか複雑な心地
幸せを願いながら
ほんの少し淋しいような
置いていかれたような
ただ
結局は他人になれないのだから
互いの人生を穏やかに見つめています